時間に対する感覚のギャップ(なんで遅刻するの)
タイ人は時間を守らない、ルーズ、と言う方もいる。
9時集合ね~で、9時5分になっても私一人・・・なんてことがよくあった。
タイに来た当初はおこがましくも、この時間に対するギャップを人間の成熟度だと思っていた。
日本人=きっちり時間を守る、順法意識の高い国民性
タイ人=時間を守れない、ルールを守る意識が低い
というステレオタイプな考え方を持っていたが、
これは大きな間違いだった。
タイ人は時間を守っていないのではなく、タイ人の時間感覚の範囲内でルールをきっちり守っている。その時間感覚が日本人と異なるだけなのだ。時間に対する考え方はその国、土地によって異なる。日本であっても都会と田舎ではそこに住む人の時間感覚が違うのは容易に理解できる。都会だとそれ遅刻!というのが、田舎に行くとそれを遅刻だと認識する人が少なくなる。
なぜ日本人が相手だと、「田舎は時間がゆっくりだからね」と寛容なのに、タイ人に対しては「ルーズだ」と判断してしまったのだろう。それは私の中で異文化許容度の低さから来たのかもしれない。相手の考え方を理解しようとしない、器が小さい人間だったと言い換えてもいい。
タイに来た当初は、集合時間5分前行動を実践していた。「君たち、ボスが先に来ていることを恥ずかしく思え」とか、「時間を守れない人間は信用されない」とか平気で言って、教育しているつもりになってた。今思うと恥ずかしい・・・。
違うんよ。私が理解したタイ時間とは・・
例)ホテルに宿泊して翌日朝に「9時集合」の場合
9時くらいに部屋を出る→チェックアウト→9:15くらいには全員集合。
例)出張なのでスワンナプーム空港で待ち合わせ「朝7時集合」
さすがに乗り遅れるの怖いので7時前に来たり、7:10くらいまでには到着。
だいたいこれくらいの時間幅の範囲内をきっちり守ろうねっていうのがコモンセンス。なので、こちらもその感覚にアジャストしていかないと、一人浮いちゃう。ここはタイなんだから、マジョリティ側の時間感覚を理解していないと、異文化ギャップのはざまで孤軍奮闘して疲れるだけ。
それでも、タイ人の中には異文化理解力の高い人間がいて、逆に日本人の時間感覚を理解してくれる人もいる。時間前行動をして「日本人と行動する時は、時間厳守ですよね~(ニコッ)」とこちら側の文化に合わせてくれる、スーパーマンもいる。
先にも書いた通り、この人が人間的に成熟しているわけではなく、ただ、異文化理解度が高いだけなのだ。まあ、それはそれで素晴らしいことでもあるけど。
いつまでも、この文化ギャップを理解せず、タイ人はルーズと大声で叫ぶおっさんがいるけど、この人たちは器が小さいだけ。残念ながら歳を取り過ぎて、異文化を理解しようとする幅の広さ、精神の若さを持ち合わせていないだけだと思っている。
私の考え方が合ってるかのどうか、賛否別れるかもしれない。でもこうやって当地側に合わせて考えた方が、精神的に健康でいられるのは間違いない。
雨の日は社員がなかなか出社しない
雨の日、始業時刻の出社率は低い。特に雨季。
日本人の感覚から言うと、何言ってんだおまえ?だろう。私もタイに来た3カ月くらいは、これが理解できなかった。
ある雨の日の朝、先任の日本人とこんな会話があった。
私「どうして今日はスタッフの数少ないんですかね?」
先任「ああ、今日は雨だから」
私「・・・・はい?」
何を言ってんだコイツは・・と思ってた。
しかし、深夜に大雨が降った翌朝、郊外で見た光景で私の考え方がガラッと変わった。
タイの雨季、雨が降ると土砂降りになる。その後、ソイ(通り)の中は水びたし。家の前は川になる。自宅から大通りや駅に向かうには、その川の中を膝まで、或いは、腰まで汚水に使って行くことになる。その後、濡れたままバスやBTS(高架鉄道)やMRT(地下鉄)に乗って会社まで1-2時間かけて行かなくてはいけない。または、家の前の水位が高すぎて車やバイクが出せない状況になることもある。実質、しばらく水が引くまで家に軟禁される状況。
日本だったらプチ水害レベル。こんな状況になっているのも知らず、定時に来るのが社会人の常識とか思ってた自分が恥ずかしい。雨が降って道路が混むなら、10-20分家を早く出たら?なんてアドバイスもしてたけど、1時間くらいは水が引かないし、引いた後には一斉に大渋滞が発生する。少し早め行動なんて、全く意味なし。
雨水が簡単にはけないのにも理由があることが理解できた。
タイはインフラがまだまだで排水設備が未熟だとか言っている人がいたが、そもそもの台地がめっちゃなだらか。チャオプラヤ川の肥沃な水田地帯が大都市に変わったエリアなので、雨水が流れていくべき低地がない。時々、海の水が川を逆流して上流で水害を起こすくらい平地なのだ。
同じ雨でも”ところ変われば”で、雨が降ってもさっと海に流れる日本とは違う。
決してタイ人が雨で出るのがめんどくさい訳でもなく、ちょっと早起きして早めに出るような予防策ができない人達というわけでもなかった。こんな事情が裏にあったのだ。
プリティー帯同で結婚式参加
タイの結婚式に居た、とんでもないオヤジ(タイ人)の話。
ツィッターなんかには、日本人の出張者はカラオケ行って遊んでいるだとか、タイのレストランで卑猥な話をしてモラルが欠如している・・・なんて批判があるが、モラルが無い大人は、何も日本人に限った話ではなく、どこの国にでもいるもんだと理解している。
ところで、タイではプリティーと呼ばれる女性たちがいる。日本でいうキャンペーンガールで、企業の展示会やイベントに出るようなモデルさんたち。広告やCMに出るようなトップレベルから、お店の展示即売をやるような子まで色々といる。
ある日得意先の二代目息子さんが結婚式を挙げるというので、パーティーに招待された。
ビジネスオーナーなのでかなりのお金持ち。趣味は高級万年筆の収集とお酒で、自宅にウィスキーバーを作ってしまうような方。当然、結婚式もタイのお金持ちらしくド派手で、タイの有名人(名前聞いたけど分からんかった)の結婚パーティーを総合演出した方が演出を手掛ける。
我々のテーブルは業界の関係者席で、我々の業界でのビックプレイヤーがタイ各地から参加していた。
その中の一人(おっさん)の横に、どう見ても場違いなプリティーがおる・・・。
胸元の空いた服に短いスカート。夜のお店のように、テーブルにいる皆さんの空いたグラスを見つけてはウィスキーの水割りを作ってくれる。氷が無くなればボーイを呼んで持って来させる。気の配り方はバッチリやなあ、なんて思ったけど、
・・・これ、キャバクラやん。ていうか結婚パーティーやでここ!?
そう、このおっさんは結婚パーティーにプリティー帯同で参加しているのだ。
50代のええ歳した大人がこんなことします?ビジネスオーナーなのでお金は持っているんでしょうが、分別は持ってないな。こいつは。
しかしながら、ここはタイ。テーブルの他の方々は、楽しそうに飲んでるオッサンに特に何も言うことなく、それぞれみなさん楽しんでパーティーに参加されている。よく聞く、「楽しんでいる人を邪魔するのは無粋」という考え方ね。
私もタイで仕事をする端くれ。無粋な男にはなるまいと、平常に振舞うことにした。
タイの結婚式 有名バンドのコンサート並みの会場
3年前の話。
優秀な若手社員の一人が結婚をするので、パーティーに来て下さいと招待状を頂いた。タイでの結婚式は何回か経験がある。新郎側の会社の来賓ということで、軽くスピーチすればいいんでしょと思い、気軽にOKと返事をしておいた。
平日の夕方スタートという、ちょっと変わったスケジュールだと思いながら、その日は仕事を早めに切り上げて会社のスタッフ10人くらいでクルマに分乗して現地へ向かった。場所はサムットプラカーン。新郎の実家エリアらしい。
現地に着く前まで、会場がどこで、どんなスケジュール進行で、自分は何をするのか等々の詳細は聞いてなかったが、これがそもそもの間違いだった。タイに来た最初の頃は、新郎側の来賓として恥ずかしくないように段取りをしっかり聞いて、且つタイの習慣上の失礼にあたるような言葉や振る舞いがスピーチに含まれてないのか等々、しっかりと研究・リハーサルして臨んだものだったが、何度も結婚式に出て慣れてきた自分には油断があった。
1時間半ほど車に揺られ、会場に着いたらそこは、
見たことないくらいの数のテーブルが並んだ大会場だった・・・・。
田舎のスポーツ施設の体育館を借り切って、ステージを前にして数えきれないテーブルが並んでおり、一部のテーブルは建屋に入りきらなくて屋外にもかなりの数が並べられている。音響装置や照明装置、スモーク等の演出スタッフだけで20人はいる。
私(なにこれ!?、誰のライブ?って規模やん・・・・)
あわてて、今日何人来るの?って聞いたら
新郎「プラマーン(だいたい)1,000人?」
わし、そんな大人数の前で歌ったこともスピーチしたことも無いよ。この時点で、全くノープランで来た自分バカバカ。とりあえず、スピーチ前までほとんど酒も飲まず、一心にスピーチ原稿を頭の中で作って脳内リハーサル。新婦側の来賓の挨拶が始まるが、地元の警察署長とか区議会議員とか何やら偉いさんが出てドッカンドッカン笑いをとってる。やばい、あんなにウケるわけない・・・。
私の緊張感はMAXな状態のまま、照明でまぶしいステージ上へ引き上げられた。
出席者「お、イープン(日本人)やん。」
出席者「ほんまや、ほんまや」
ってな感じで、皆さんが私が何をしゃべるのか聞こうと、一斉にこっちを向く。
私(良いんですよ、是非そのままご歓談を続けてくださーーい!!)
という心の叫びもむなしく、静まり返る会場。
お決まりのプアンマーライを新郎新婦の首にかけてあげた後、ド緊張と静寂の中、英語でスピーチを開始。弊社のスタッフがそれをタイ語に翻訳してくれた。
新郎が優秀な営業マンであること、会社での仕事ぶりにふれた後、奥さんきれいね、今年はボーナスアップするからね~のネタがややウケのしょっぱい結果であった・・・・・・。
終わってからテーブルに戻ってスタッフとヤケ酒。
私「あんなのでよかったのかいな~?」
タイ人スタッフ①「いいんですよ。誰も英語わかんないし(笑)」
タイ人スタッフ②「結婚式で新郎の来賓が外国人って、なんか外資系っぽくてOK」
なるほどね。結局わたしは、外国人が来賓で来てる~みたいなお飾り=パンダ的な役割なのね。自分の求められている役割を理解し、きっちりと責任を果たせた夜であった。